プレスリリース
新型キャベツ収穫機の実用化に見通し

- 高能率機械収穫技術を確立 -

情報公開日:2012年8月20日 (月曜日)

ポイント

  • 高精度の刈取機構でキャベツを一斉収穫
  • 機上で選別、調製作業を行い、大型コンテナに直接収容
  • 調製してコンテナに収容するまでの作業能率は、従来機の2倍の20a/日を達成

概要

農研機構 生研センターでは、需要が伸びている加工・業務用キャベツなどに対応した、大規模畑作地帯でのキャベツの低コスト生産を支援するため、ヤンマー株式会社と共同で自走式・乗用型のキャベツ収穫機を開発中、実用化の見通しが立ったところです。

過去に実用化されたキャベツ収穫機は、収穫精度や、直接コンテナに収容出来ないなどの問題があって導入が進みませんでした。そのため、現場のニーズに対応すべく、今回、刈取部分の精度向上や、機上で選別・調製作業をして直接コンテナに収容できるなどの大幅な改良を行ったところです。

関連情報

予算:運営費交付金

共同研究企業:ヤンマー株式会社

特許:出願中


詳細情報

開発の背景と経緯

  • 加工・業務用キャベツの需要拡大に対応するため、北海道などの大規模畑作地帯では、大規模なキャベツ作の導入と産地育成が求められますが、収穫作業は多くの作業時間を要することから、機械化による省力かつ低コストな収穫体系が求められています。
  • これまでに1条収穫型のキャベツ収穫機を実用化しましたが、段ボール出荷に特化した小型機であったため、大型コンテナで集出荷することが多い大規模産地での収穫作業には不向きでした。また、平成20~22年に開発に取り組んだ2条収穫型のキャベツ収穫機は、コンテナ集出荷に対応しましたが、選別・調製を別工程としたため、出荷までの作業時間を多く必要としました。
  • そこで、平成23年度から、過去に実用化した1条収穫型キャベツ収穫機の高精度の刈取機構を応用し、機上で選別・調製作業ができ、大型コンテナに直接収容するキャベツ収穫機の開発に着手しました。今年度までに、キャベツの損傷が少ない刈取機構や、能率的な選別・調製作業ができる機上調製ラインを開発し、北海道農業研究センターおよび鹿児島県農業開発総合センター大隅支場における性能評価試験により、実用化の見通しを得ました。

開発機の概要

  • 開発中のキャベツ収穫機は、キャベツを一斉収穫し、機上で選別、調製して、集出荷用の大型コンテナに収容します。(図1、2)
  • 刈取りは、茎部を掻き込みディスクでしっかり掴みながらキャベツを引き抜き、挟持ベルトで搬送するとともに、結球部の姿勢を補正しながら茎部を最適な位置で切断し、機上の調製ラインまで搬送します。
  • 機上では作業者が、ベルトコンベア上に流れるキャベツを選別したり、不要な外葉を剥がしてから、コンテナに収容します。
  • 切り直しが必要なキャベツや、処理が追いつかず保留するキャベツはコンベアに並んで(作業者から見てコンベアの奥側に)設置した処理保留棚によけて置きます。
  • 北海道農業研究センターで行った試験では、毎秒0.15mの速度で収穫でき、作業能率は4人作業で約20a/日でした。これは、従来の1条収穫型収穫機で調製してコンテナに収容するまでの作業能率の2倍に相当します。鹿児島県農業開発総合センターで行った試験では、全体の85%以上のキャベツを損傷なく刈り取ることができました。(表2)

今後の予定

現在、北海道や鹿児島など、主として加工・業務用キャベツを大規模に作付している産地で実証試験を実施し、作業能率、作業精度、取扱い性等の向上をはかり、平成25年度の市販開始を目指します。

用語の説明

加工・業務用キャベツ

加熱調理用、カット用を中心に寒玉系品種で、加工歩留まりを高めるために6玉程度/10kg(1.5~2.0kg/玉)の大玉が求められています。

 図1 キャベツ収穫機図2 機上での選別・調製作業とコンテナへの収容作業

表1 主要諸元、表2 作業性能