育成のねらい
はとむぎはお茶の原料や雑穀米の材料として利用されており、近年の健康食品ブームにより、実需者からは、国内産はとむぎの増産が求められています。
これまで国内で栽培されていた、「はとむすめ」、「はとひかり」等の品種は収量性が劣っていたことから、九州沖縄農業研究センターでは、産地での収量性その他の栽培適性に優れた品種として「あきしずく」を育成しました。
「あきしずくは」は耐湿性が比較的高く、水田転作作物として栽培が可能であり、今後作付の拡大が期待されます。
- 多収で葉枯病に強いはとむぎ新品種 -
情報公開日:2007年6月19日 (火曜日)
はとむぎはお茶の原料や雑穀米の材料として利用されており、近年の健康食品ブームにより、実需者からは、国内産はとむぎの増産が求められています。
これまで国内で栽培されていた、「はとむすめ」、「はとひかり」等の品種は収量性が劣っていたことから、九州沖縄農業研究センターでは、産地での収量性その他の栽培適性に優れた品種として「あきしずく」を育成しました。
「あきしずくは」は耐湿性が比較的高く、水田転作作物として栽培が可能であり、今後作付の拡大が期待されます。
はとむぎ種子が秋に成熟して実っている様子が雫の形に似ていることから、品種名を「あきしずく」と命名し、種苗法に基づく品種登録申請をしました。
福岡県、広島県、栃木県での作付が予定されています。
図1 開花期頃のあきしずく
図2 種子(左からあきしずく、はとひかり、岡山在来)
はとむぎ:
はとむぎは植物学的にトウモロコシに近縁なイネ科作物です。ジュズダマとは種が同じです。ジュズダマは殻が非常に固く、粒が粳性ですが、はとむぎは殻が柔らかくて剥きやすく、粒が糯性です。原産地はインドシナ半島付近といわれています。日本には中国から朝鮮半島を経て渡来したと考えられていて、韓国品種と似た特性を持っています。中国では子実粒をヨクイニンという漢方薬として利用しています。薬効は滋養強壮で、お粥などとして食されています。
日本ではお茶や、精白粒を加えた飯米として食されています。また、黍などと混ぜて雑穀米の原料として利用されています。国内産はとむぎはペットボトル用のお茶として、さらに雑穀米原料としての需要が多くなっています。
国産はとむぎの生産量は700トン程度で、国内需要の1割を賄っています。作付面積は500ヘクタールで、東北地方と関東地方で多く作付けされています。県別では、岩手県、栃木県、福岡県、秋田県、広島県の順です。品種では、「はとむすめ」が栃木県を中心に関東地方以南の地域で100ヘクタール以上作付けされています。次に、「はとじろう」が東北地方で100ヘクタール作付けされています。「はとひかり」も関東地方以南の地域で作付けされています。
着粒層:
はとむぎは稲や麦と異なり、種子が下から上まで茎に着粒しています。最下部の着粒位置から最上部の着粒位置までの長さを着粒層といいます。はとむぎをコンバインで収穫する際には刈り取る幅を広くする必要があり、着粒層が狭いほど刈り取り幅が狭くなり、収穫の効率が高まります。
葉枯病:
はとむぎの主要な病害です。生育後期に発病すると、株全体が枯れて収量が著しく低下します。また、西日本では葉が枯れなくても不稔粒を発生して、品質が低下する原因になっています。今までは耐病性品種がないので、防除は農薬に頼っていました。
穀実重・子実重:
穀実重は殻つきの重量、子実重は殻を除いた重量。