研究の背景
小麦が実る5~6月に雨の多い我が国では、赤かび病は重要な病害です。赤かび病が多発した平成10年の被害金額は全国で約22億円と見積もられています。さらに赤かび病の病原菌が作る「かび毒」による穀粒汚染が深刻な問題となっています。現状のかび毒汚染対策としては、小麦の開花期以降に農薬を複数回散布する方法が取られていますが、穀粒への残留を避けるために収穫期近くでは農薬を使用できないことから、防除技術として十分な効果を上げているとは言えません。
このような背景から、赤かび病に強い新品種の開発や新しい殺菌剤の利用により、農薬散布回数が少ない新しい防除体系を開発することとしました。
先端技術を活用した農林水産研究高度化事業での取り組み
本研究では小麦の主産地である九州および北海道においてそれぞれ公立農業試験場と連携をとりながら研究を推進し、地域の要望に根ざした防除技術を開発することとします。主な取り組みの内容は以下の通りです。
- 小麦品種の中では赤かび病に最も強い九州の既存品種をさらに改良し、かび毒の蓄積が少ないめん用小麦新品種を世界に先駆けて開発するとともに、生産現場でかび毒蓄積量の低減効果を実証します。
- 多発要因である降雨などの気象条件とかび毒蓄積との関係を明らかにし、気象条件に応じた薬剤防除技術を開発します。
- 登録申請中の新しい殺菌剤を有効に活用して、使用量が少なく、しかもかび毒低減効果の高い防除技術を開発します。
- 以上の技術を組み合わせて、赤かび病の多発年でもかび毒を暫定基準値以下に押さえ、通常の発生量の年では農薬の使用量を半減する防除体系の確立をめざします。
- 研究期間 平成18年度~平成21年度、18年度予算 17百万円
研究分担関係
九州沖縄農業研究センター(赤かび病研究チーム、小麦・大麦育種ユニット)
福岡県(福岡県総合農業試験場)
北海道(北海道立中央農業試験場、北見農業試験場、十勝農業試験場)