花き研究所

2011年

2011年 12月
マンリョウ (万両)(Ardisia crenata )

ヤブコウジ科の常緑小低木。特に名前がめでたいのでセンリョウ(千両、センリョウ科)などとともに正月の縁起物とされます。センリョウとよく似ていますが、植物学的には全く違う植物です。葉の上に果実が付くのがセンリョウ、葉の下につくのがマンリョウです。照葉樹林帯に自生していたものが庭園で栽培されるようになりました。同じヤブコウジ科に、ヒャクリョウ(百両、別名カラタチバナ)、ジュウリョウ(十両、別名ヤブコウジ)と呼ばれる植物があります。ともに赤い実が付きますが、前二者ほど一般的ではありません。

2011年 11月
キク(Chrysanthemum × morifolium Ramat.)

キク科キク属の多年草。キクは園芸的には大ギク(一輪ギク)、小ギク、スプレーギクに区別されます。写真のキクは大ギクの仲間で、厚走りと呼ばれる花型です。大ギクは菊花展等によく出品されますが、多くの場合、三本仕立てと呼ばれる伝統的な方法( 茎の先端を摘心し3本の側枝を出させる)で仕立てられます。花の大きさをそろえて、3本の中で一番高い枝を後方になるように配置し「天」と呼び、残りの2本がほぼ同じ高さで「地」、「人」の順とします。あまり知られていませんが、展示される前に花形を整える作業があり、花弁を傷つけない様に注意しながら一つ一つ花弁の乱れを整えて会場に展示されています。

2011年 10月
センブリ (Swertia japonica)

センブリは、日本全国の、日当たりのよいところで見られるリンドウ科の小柄な二年草です。センブリというと、煎じて飲む苦い胃薬というイメージがありますが、夏の終わりから秋ごろに、小さいながら可憐な花を咲かせます。よく見ると、赤みのあるつぼみと白い花弁との組み合わせがきれいです。道端や野山に自生する小さな花の美しさを発見することもまた楽しいものです。

2011年 9月
ダリア (Dahlia Cav.)

ダリアはキク科の球根植物で、原産地はメキシコからコロンビアに至る中央および南アメリカ高地です。現在の園芸種は交雑種であり、数万ともいわれる多様な品種があります。16世紀にメキシコからスペインに種子が渡り、19世紀前半に花色、花形が多様化して大流行しました。我が国へは17世紀半ばに伝来し、明治時代に品種改良と栽培が盛んになりました。現在、我が国のダリア球根生産は奈良県で多く手がけられています。写真の花は'かたえくぼ'という品種です。管状の花弁が球状に万重咲きになったもので、ボール咲きと呼ばれています。

2011年 8月
オオハナウド (Heracleum lanatum)

セリ科の大型多年草。北海道、本州近畿地方以北に分布し、高山から山間地の湿った場所に、北海道では平地や海岸にも生育します。白い小花を多数集めてセリ科特有の形態(複散形花序と呼びます)になります。近くで一つ一つの花を観察するとなかなかきれいですし、離れてみても全体が小山のようで美しいです。一番外側の小花は花弁が大きくなります。なお近縁のハナウドは本種より小型で関東地方より西に分布します。ウドはウコギ科の多年草で本種とは全くの別の植物です。

2011年 7月
イワタバコ(Conandron ramondioides)

イワタバコ科の多年草、岩手県以南の滝のそばや山地の湿った岩場の斜面に自生しています。葉がたばこの葉に似ているので、この名があります。6月から8月にかけて薄い青紫色の花を咲かせます。写真の花はピンクですが他に白、濃い青などが園芸品種としてあります。イワタバコ科は日本に8種類自生していますが、この科は熱帯から亜熱帯にかけて広く分布し、約3200種から出来ている大きな科です。近所の園芸店などでよく見かけるセントポーリアやグロキシニアもこの仲間です。

2011年 6月
シラ-・ペルビアナ(スキラ・ペルビアナ)(オオツルボ)(Scilla peruviana)

ユリ科の球根植物。ポルトガル、アルジェリア等の原産。Scillaはラテン語なのでスキラと発音するのが正しいと思われますが、一般には英語流にシラーと発音しています。ちなみにperuviana のペルーは南米の国名ですが直接の関わりはありません。一般的なシラーといえば釣り鐘型の花を穂状につけるカンパニュラタ(Scilla campanulata=S. hispanica)の方を指しますが、最近はこちらの種類も見かけるようになりました。比較的丈夫な植物で数年は植えっぱなしでも立派な花を咲かせてくれます。

2011年 5月
ユキノシタ(Saxifraga stolonifera)

ユキノシタは北海道を除く日本各地に自生する多年生の草本で、日蔭の湿ったところで見られます。庭の植栽にも使われます。毛が密生した厚い葉は、地面を覆うようにロゼット状についています。5月ごろに伸びだす花茎の先に、白い花をいくつも咲かせます。5枚の花弁のうち下の2枚が長く、短い3枚の花弁とあわせて、漢字の大の字のようです。近付いて見ると、短い花弁にはアントシアニンによる赤い模様がついているのが分かります。

2011年 4月
チューリップ(Tulipa cvs.)

富山県のチューリップ球根養成畑での「ウイルス抜き」の風景です。チューリップはウイルス病に弱く、感染すると花に色割れ現象が起こり商品価値が下がります。いったんウイルス病に感染すると病気を除去できないため、感染した植物全体を廃棄するのです。このために農家は畑でチューリップを開花させ、発病株を見つけたら球根ごと抜き取る作業を行います。時間との戦いのため、体力的にもきつい仕事ですが、汚染球根を少しでも減らすために頑張っています。

2011年 3月
ハクモクレン(Magnolia heptapeta )

モクレン科モクレン属の落葉高木、原産地は中国です。 モクレンと名前は付いていますが、濃紅色の花を咲かせるモクレン(M. quinquepet) とは別の種類です。ハクモクレンはモクレンと交配が可能なため、欧米では交配雑種から数多くの園芸品種が作られています。これらはサラサモクレンとかニシキモクレンなどと呼ばれ、我が国でも庭木や街路樹として利用されています。

2011年 2月
乙女ツバキ(Camellia japonica 又は Camellia japonica var. decumbens cv. Otometsubaki)

ツバキは日本原産の花木です。花木となる前から材は薪炭、調度、灰は草木染、子実は油糧や生薬として利用されてきました。室町時代から多くの園芸品種が誕生し一部は茶花として利用されます。研究所内の国道沿いにはたくさんの種類のツバキが植えられており、その中の一つがこれです。ツバキには様々な花形があり、本種は千重咲と呼ばれるタイプで雄しべが全て花弁化しています。椿のなかでは遅咲きの種類です。学名の属を示すカメリアはツバキを世界に紹介したカメルという人名由来です。種を示すジャポニカは日本産の意味です。

2011年 1月
スイセン(Narcissus tazetta var. chinensis)

日本スイセンとも呼ばれます。スイセン属はもともと地中海沿岸の原産ですが、本種は房咲きスイセンの一種で古く中国経由で日本に伝わり、繁殖力が旺盛なことから越前、淡路、房州などに自生化しています。後に伝わったラッパズイセンや大杯ズイセンよりも、1ヶ月以上早く春を告げてくれます。学名は、水面に映った自らの姿に恋した美少年ナルキッソスの化身というギリシア神話に由来します。いわゆるナルシシズムの語源です。

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