花き研究所

2012年

2013年 1月
サザンカ(Camellia sasanqua)ツバキ科の常緑広葉樹

つくば市は茨城県の県南地方に属しますが、内陸気候になり冬場は結構寒くなります。冬季の気温は関東平野部でも最も低い部類に入り、1月の最低気温平年値は、つくば市で-3.2°Cになります。厳冬期の早朝には街路樹や生け垣として植えられているサザンカ等にこのような氷の花が咲くことがあります。私はかつて自転車通勤をしていましたが通勤途上の小さな発見です。ほとんどは日陰部分で立派な霜ができます。近づきすぎて息を吹きかけたりするとすぐに溶けてしまうので時間をかけずにさっと撮ってしまう必要があります。

2012年 12月
球根ベゴニア(Begonia × tuberhybrida)塊茎を持つ多年草

球根ベゴニアは、アンデス山地原産の球根性のベゴニアから19世紀にイギリスで産み出されました。その後、各国で品種改良が進み様々な種が複雑に掛け合わされた結果、今ではいろいろと変化に富んだ品種が作られています。 茎が直立する「立ち性」と、しだれる「下垂性」のタイプに大きく分けられ、写真のベゴニアは「下垂性」のタイプです。花の大きさは5cm~25cm、一重咲き、八重咲き、バラ咲き、など様々な花型があります。近年、花の豪華さと豊かな花色で人気があります。植物園などでは、毎年、ベゴニア展が開催されていますし、観光地などにはベゴニア園が開園しているところもあります。

2012年 11月
ホトトギスTricyrtis hirta(ユリ科の多年草)

一般的にホトトギスというと鳥を思い浮かべると思いますが、植物にもホトトギスと呼ばれるものがあります。花びらに鳥のホトトギスの模様とよく似た斑点があるため名付けられました。葉にも紫の斑点があります。東アジア原産です。 この属には20種類くらいの種がありますが、内10種類は日本だけに生育する固有種となっており、日本で分化したと考えられます。写真のホトトギスは南関東より西、四国や九州の山野の日陰に自生しますが、しばしは庭園にも植えられています。花の側面から撮影しているので花の基部に花びらやがくが変化した突起状の部分、距(きょ)があるのがよくわかります。

2012年 10月
イソギク(Chrysanthemum pacificum)

千葉県から静岡県にかけて分布する野生のキクですが栽培もされています。多年草です。輪ギクや小ギク等の栽培ギクと同じキク属の植物です。海岸によく生えるので磯(いそ)ギクの名があります。葉は厚みがあり、裏側に白い毛が密生し、葉の縁まであるので表面から見ると葉が白く縁取られているように見えます。これらは海岸の乾燥条件への適応と考えられます。写真には10個あまりの花が写っています。それぞれの花は50個以上の筒状花(花弁が小さく筒状になった花)が集まってひとつの花のように見えます。舌状花(一般的な栽培ギクに見られる花びら)はありません。よく見ると、どの花も周辺部の筒状花は開いて雌しべが伸び出していますが、中心部分の筒状花はまだ開いていません。

2012年 9月
ニラ(Allium tuberosum)

ニラといえば独特の臭気が特徴であるネギ属の野菜です。秋になると葉のあいだから花茎が伸びてきて、小さな白い花をたくさん咲かせます。3枚の花弁と3枚の苞片がほぼ同様の形をして、全部で6枚の花弁があるように見えます。伸び始めて間もない花茎はやわらかくて食べられますが、写真のように花が咲くころにはもう固くて食べられません。なお、ハナニラという名前の植物がありますが、これはニラの仲間ではなく、もっと大きい花が咲く別のグループ(ハナニラ属)の植物です。

2012年 8月
ナツズイセン(Lycoris squamigera)

ヒガンバナ科の多年草。真夏の頃に花茎だけを出してヒガンバナよりひとまわり大きめの花を咲かせるので、ひときわ目立った存在になっています。人里近くの山野に生育していますが、農家の庭先や道ばた付近でも咲いているのをよく見かけます。古くに中国からやってきた史前帰化植物といわれていますが、今では日本の夏の風物詩の1つになっています。

2012年 7月
カワラナデシコ(Dianthus superbus L.var. longicalycinus)

ナデシコ科ナデシコ属の多年草。我が国の原産で、本州以西~沖縄、朝鮮半島等に分布します。秋の七草となっていますが、実際の開花は7~9月です。海岸の砂浜や河原等日当たりのよい場所に自生します。かつてはこのような場所は草刈や枝打ち作業等で一定面積が維持されてきたのですが、近年はこのような作業が行われなくなり、本種に適当な日当たりの良い環境が少なくなり、絶滅が危惧されている地域があります。このように本種は人間の営みと密接に関係して生育してきた野生植物といえます。

2012年 6月
ナツツバキ(Stewartia pseudocamellia)

ナツツバキは、宮城県より西に分布するツバキ科ナツツバキ属の落葉性高木です。常緑のツバキと同じくツバキ科ですが、ツバキとは属が異なります。初夏に小さいボール状のつぼみがつき、やがて白くて清潔感のある花を咲かせます。花びらには少し皺があり、フリルのようです。サルスベリに似た、つるつるした樹肌も特徴です。庭木にもよく使われます。ナツツバキとごく近い種類に、ナツツバキより花も葉も小さいヒメシャラがあります。

2012年 5月
オオキリシマエビネ(ニオイエビネ)(Caianthe izu-insuaris )

ラン科の多年草。エビネは日本各地の山林に自生している野生ランです。キエビネ、キリシマエビネ、ジエビネなどのほかに、自然交雑種などがあり花の色や形が異なる様々な種類があります。ニオイエビネは伊豆諸島の特産種で、独特な香りが特徴です。近年、ニオイエビネからは様々な品種が作出され、パステルカラーの色調と特有な香りで人気が出ています。写真の花も人工交配によって育成された交配種です。

2012年 4月
キバナノアマナ(Gagea lutea)

ユリ科キバナノアマナ属の多年草(球根植物)。別名キバナアマナ。 北海道、本州中部以北に広く分布。早春に葉と同時に花茎を出す。北海道などでは黄色いカーペットのような群落を形成することがあります。日差しの十分ある落葉樹林下でいち早く光合成を行い、開花し、種子を結実させ夏には地上部は姿を消すというspring ephemeralの一種。適当な訳語がありませんが「春植物」では即物的すぎて面白味がありません。「春の妖精」あたりが意訳として良いように思います。

2012年 3月
黄房水仙(Narcissus tazetta cv.)

ヒガンバナ科の球根植物。スイセンにはラッパスイセンや八重咲きスイセンなど、花の形や姿が異なる様々な園芸タイプがあります。この花は房咲きスイセンと呼ばれ、ニホンズイセンと同じタイプです。ニホンズイセンが咲き終わる頃から咲き始め、香りが強く黄色い花色とあいまって春の訪れを感じさせてくれる花の1 つです。

2012年 2月
カトレア(Cattleya cvs )

ラン科の多年草。カトレアは各地で開催されるラン展等で会場を豪華な雰囲気にする立役者です。カトレアには、原種カトレアと呼ばれる野生種とカトレアの近縁種との交配で作り出された園芸品種のカトレアがあります。花屋さんで良く見かけるのは園芸品種のカトレアです。様々な園芸品種があり、毎年たくさんの新しい品種が発表されています。写真のカトレアは品種名をパメラヘザリントン'コロネーション'(Rlc.Pamela Hetherington 'Coronation' FCC/AOS)といいます。1970年に品種登録され、ピンク系カトレアの名花として知られています。

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