農業環境技術研究所が公式ウェブサイトに毎月公開してきた 「農業と環境」 が、先月で第150号に達しました。ここでは、その12年6か月の経過をまとめておきたいと思います。
「農業と環境」の各ページ右上のすみに、「訪問者カウンター」が表示されています。
このカウンターは、「農業と環境」 内のHTMLページを直前の利用者とは別の利用者が閲覧したときにだけ数字が増え、同じ利用者が「農業と環境」内のほかのページを続けて閲覧しているあいだは数字は変化しません。ですから、このカウンターの数字は「農業と環境」への、のべ訪問者数と見なすことができます。2000年5月の「情報:農業と環境」第1号の公開と同時に、このカウンターも動きはじめ、12年以上にわたってみなさんの訪問を数え続けています。
2000年度の訪問者数は1万4千人にすぎませんでしたが、2002年度には約6万人、2004年度には約12万人、2006年度には約18万人と、年度ごとに訪問者数を大きく増やし、カウンターが表示する合計の訪問者数は、2008年7月に90万人をこえました。
なお、2008年以降の訪問者数は、前年と同程度、あるいは前年を下まわるようになっています。農環研ウェブサイト内のほかのページが充実したことも原因の一つですが、もっとも大きな原因は、中継サーバを経由する携帯電話での閲覧や、パソコンやLANのセキュリティー対策の強化などによって、カウンターのプログラムが新たな訪問者を判別できないことが増えたためと考えられます。
「農業と環境」年度別訪問回数の推移 (2000年5月〜2012年9月)
2000年7月に公開された「情報:農業と環境」第3号の「生態系を破壊する小さなインベーダー」から「本の紹介」の掲載を開始し、150号の「日本人は植物をどう利用してきたか」まで、329冊を紹介しました。
農業環境研究にかかわるさまざまな分野の海外論文を紹介する記事を掲載しています。最初に紹介されたのは、「地球規模で両生類の個体数が減少傾向を示している」(Quantitative evidence for global amphibian population declines. J.E.Houlahan et al. Nature 404:752-755 (2000) )でした。これまでに紹介した論文は150件以上になります。
農業環境技術研究所が農事試験場から受け継いだ貴重な遺産、特殊な施設などを紹介しました。とくに古いものを紹介した記事としては、「倭漢三才図会、康煕字典、本草綱目啓蒙、本草図譜、農政全書」、「農家益、書言故事」、「マックス・フェスカの土性図」、「96年前からの公害汚染植物」、「農事試験場における肥料依頼分析の記録」 などがあります。
2003年11月2004年11月まで、「わが国の環境を心したひとびと」 と題して、さまざまな時代・分野の11人を紹介しました。取り上げた人物は、熊澤蕃山、栗田定之丞、中川金治、ヨハネス・デ・レーケ、上杉鷹山、吉岡金市、岡田 温、岸本良一、古在由直、外山八郎、司馬遼太郎 です。
農業環境技術研究所が常陽新聞に連載した研究紹介記事「ふしぎを追って−研究室の扉を開く」(24編)を、2009年7月から2010年6月まで掲載しました。「土の中の放射能: 自然放射性物質と人工放射性物質」、「地名と農業:迅速測図と歴史的農業環境閲覧システム」、「土壌呼吸: 土から発生する二酸化炭素」、「メタン:水田から出る温室効果ガス」などが、よく読まれています。
2001年から2005年にかけて、欧州環境局(EEA)や欧州委員会が公表した農業政策や科学研究にかかわる報告書、理事会規則などを抄訳して紹介する記事を多数掲載しました。また、2005年から2006年にかけては、国際的な規格の制定や研究推進の動き、報告などを解説する「国際情報」シリーズを掲載しました。適正農業規範(GAP)、 遺伝子組換え作物の商業栽培状況と通商紛争、 新しい「緑の革命」へ −IRRIの環境研究方針−、 コーデックス委員会の食品カドミウム規格 などは、現在でも多くの閲覧があります。
海外で開催された国際学会や専門家会合・現地調査などに参加した研究者による報告記事(国際会合等参加)を、2008年から掲載しています、会議などの概要だけでなく、各研究分野の国際的な動向についての解説やこぼれ話、感想などを、写真をまじえて、わかりやすく報告しています。
2007年から2011年まで「GMO情報」として、遺伝子組換え生物(GMO)の世界的な栽培動向の報告書や環境影響の研究論文などを紹介・解説する記事50編を連載しました。バイオ燃料と遺伝子組換え作物、 不正種子利用に潜む抵抗性発達の危険性、 組換え作物のメリットとデメリット、 小麦のゆくえ、2020年に組換え品種登場予定 などがよく読まれています。
2008年7月から2009年2月まで、土壌肥料学にかかわるエッセイが8回にわたって連載され、多くの方に読まれました(朝日長者伝説と土壌肥料学/司馬史観による日本の森林評価と土壌肥料学/徳川綱吉と土壌肥料学/リービッヒの無機栄養説と土壌肥料学/火山国ニッポンと土壌肥料学/化学肥料の功績と土壌肥料学/水田稲作と土壌肥料学(1)/水田稲作と土壌肥料学(2))。
農業環境技術研究所には、研究問題に対応する内部組織としてリサーチプロジェクト(略称 RP)が置かれています。2006年から組織された16のRPの研究活動をわかりやすく紹介する記事を2006年9月から2007年6月まで掲載しました。さらに、2011年に再編された10のRPの紹介記事を2011年8月から掲載しました(温暖化緩和策RP/作物応答影響予測RP/食料生産変動予測RP/生物多様性評価RP/遺伝子組換え生物・外来生物影響評価RP/情報化学物質・生態機能RP/有害化学物質リスク管理RP/化学物質環境動態・影響評価RP/農業空間情報・ガスフラックスモニタリングRP/農業環境情報・資源分類RP)。
このほか、生態系計測研究領域 三中信宏 上席研究員による 農環研ウェブ高座「農業環境のための統計学」 の連載が、2012年8月から始まっています。
第61号(2005年5月)から「農業と環境」のページ構成を変更し、記事ごとのアクセス記録を残せるようになりました。ここでは149号(2012年9月)までに掲載された約900件の記事のうち、これまでの閲覧回数の多いものを、公開された年度ごとにリストしました。