家畜伝染病

結核(tuberculosis)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:牛、水牛、鹿、山羊

1.原因

 

 主にウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)を原因とする。ウシ型結核菌はヒト型結核菌(M. tuberculosis)などと共に結核菌群に分類される。結核菌は、人工培地における増殖速度が遅い遅発育抗酸菌である。宿主域が広く、人畜共通感染症の病原体である。

 

 

2.疫学

 

 ウシ型結核菌の伝搬はエロゾルの吸入による経気道感染が主である。海外では野生動物(アライグマ、ポッサム等)が感染源として注目されている。わが国では2018~2020年度に実施されたサーベイランスにより、本疾病の清浄性が確認された。これを受けて、国内では、2021年度から清浄性維持サーベイランスが実施されている。

 

 

3.臨床症状

 

 重度の結核肺病巣を持つ個体、あるいは全身感染を起こした症例では、発咳、被毛失沢、食欲不振、元気消失、乳量減少、痩削等の症状がみられるが、臨床的異常を認めず、剖検後に本病と診断される事も多い。

 

 

4.病理学的変化

 

 結核性肉芽腫病巣は主に肺及び縦隔膜リンパ節、肺門リンパ節に好発し、腸管粘膜、腸間膜リンパ節、顎下リンパ節、耳下リンパ節、乳房上リンパ節等にも形成されることもある。妊娠牛や免疫機能の低下した個体では、全身性粟粒結核となり重症化することがある。病変は初期には炎症性細胞浸潤からなる滲出性炎であるが、慢性化し増殖性の結核結節形成に至る。

 

 

5.免疫学的検査

 

 ツベルクリン診断液を皮内に注射し、48〜72時間後の腫脹差を測定して判定するツベルクリン検査が主体である。2021年度からはOIEマニュアルに記載のあるツベルクリンPPD診断薬が用いられる。インターフェロン・ガンマ検査は、全血液を用いて、抗原特異的に産生されるインターフェロン・ガンマをELISAにより検出する検査で、非結核性抗酸菌等の感染と判別可能である。

 

 

6.病原学的検査

 

 肺や胸膜等のリンパ節並びに乾酪化病巣を有する臓器を培養に供する。乳剤化した組織を水酸化ナトリウム液で処理し、Tween80添加小川培地等を用いて培養を行う。1~2ヵ月後に発育が確認されたコロニーは結核菌群に特異的なPCRにより菌を同定する。他に生化学性状検査も行う。

 

 

7.予防・治療

 

 現在、実用的なワクチンはなく、化学療法も困難である。患畜と診断された動物の早期摘発と淘汰が防疫上重要である。

 

 

8.発生情報

 

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)

 最近の家畜衛生をめぐる情勢について:農林水産省・消費・安全局・動物衛生課(令和2年5月)



編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

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