届出伝染病

チョーク病(chalk brood disease)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:蜜蜂

1.原因

 

 チョーク病の原因であるAscosphaera apisは不整子嚢菌網に属する真菌である。形態的に特徴的な胞子嚢(spore cyst:直径30〜100μm)を形成し、中に子嚢胞子(1.2〜2.0×2.0〜3.8μmの米粒状〜腎臓形)から成る胞子球(spore ball:直径8〜20μm)を含む。コロニー表面は強い羊毛状、裏面は無色で特有の酸味臭を呈する。

 

 

2.疫学


 本菌の胞子は環境中(土壌、花粉、蜂蜜、巣箱内等)でも比較的長期間生き延びることができるうえ、健康ミツバチからも分離されるため、一度発生した蜂群や蜂場では病原菌を根絶させることは容易ではなく、毎年慣習的に発生する例が知られている。本疾病は、原因菌に汚染された飼料の給与により経口感染し、特に4〜5日齢の蜂児に効率に発生する。わが国では1979年に初めて発生が報告され、極めて短期間のうちに全国に蔓延したと考えられる。近年、全国的に毎年数十件以上の発生が報告されているが、実際の発生件数は、さらに多いと考えられる。

 

 

3.臨床症状


 感染死した蜂児は真菌の白色菌糸が表面に発育し、全体に白いチョークの粉が吹いたようになる。このころは蜂児は硬化しミイラ状になり、表面に胞子嚢が形成されるに従い、黒色へ変化する。死亡幼虫は働き蜂により除去されるため、病勢が進むと巣箱の底や巣門の外にミイラ化した蜂児が多数見られるようになる。軽症例では巣脾端の雄蜂群のみ感染するが、重症例では働き蜂群も感染することが知られる。

 

 

4.病原学的検査


 本病に対する対策は、一般の蜂病と同様に群を強勢に維持することが重要である。発生蜂群に対して、以前はソルビン酸やプロピオン酸等の噴霧、あるいは抗菌作用のある消毒薬の散布などが試みられていたが、現在、本病予防に使用できる登録薬剤はない。真菌胞子は熱に弱いことから、器具の熱湯消毒、火炎滅菌などは有効である。

 

 

5.発生情報


 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

6.参考情報


 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)、獣医伝染病学第五版(近代出版)、菌類図鑑(講談社)、カビ検査マニュアルカラー図譜初版(テクノシステム)、家畜衛生統計(農水省)

チョーク病−1(原図:動物衛生研究所、浜岡隆文氏) チョーク病−2(原図:動物衛生研究所、浜岡隆文氏) チョーク病−3(原図:動物衛生研究所、浜岡隆文氏)
写真1:Ascosphaera apisの発芽エキス寒天培地の発育集落 写真2:Ascosphaera apisの胞子嚢 写真3:働き蜂によって巣の外に廃棄されたチョーク病蜂児(白色および黒色ミイラ)

編集:動物衛生研究部門 疾病対策部病性鑑定グループ、文責:細菌・寄生虫研究領域 花房泰子

(平成29年9月21日 更新)

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