牛流行熱(bovine ephemeral fever)
1.原因
ラブドウイルス科、エフェメロウイルス属に分類される牛流行熱ウイルス(bovine ephemeral fever virus)。ゲノムは1本鎖(-)RNAであり、ウイルス粒子は長さ90〜180nm、直径約80nmの弾丸型の形状をもち、エンベロープを有する。
2.疫学
日本、台湾、中国、韓国、インドネシア、オーストラリア、中東、アフリカ諸国の熱帯〜温帯にかけて牛や水牛に発生がみられる。ウイルスは蚊やヌカカによって媒介されるため、発生には季節性がある。我が国では1949〜1951年に大規模な流行があり、その後も主に西日本において周期的な流行を繰り返してきた。しかし、近年では流行が限局的であり、頻度も少ない。2001年と2004年には沖縄で発生がみられたが、我が国の九州以北では約20年間本病の発生がない。発症率は一定でなく、数%〜100%と幅がある。死亡率は1%以下である。
3.臨床症状
発症牛では突発的な発熱(41〜42℃)がみられるが、その後1〜2日程度で回復することが多い。また、元気消失、食欲低下、呼吸促拍、流涙、流涎、四肢の関節痛や浮腫による歩行困難、起立不能、筋肉の振戦、反芻停止、乳量低下ないし泌乳停止などの症状を呈するが、解熱に伴って回復することが多い。
4.病理学的変化
肺における間質性気腫、充血、水腫がみられることがあり、重症例では肺全体が膨張し、伸縮不能となって死亡することがある。また、上部気道粘膜(鼻腔、咽喉頭、気管)の充出血、関節の滑膜炎、リンパ節炎などが知られている。
5.病原学的検査
ウイルスの分離材料として、発症牛や同居牛の血液を使用する。分離材料を培養細胞(HmLu-1、BHK-21、Vero)あるいは乳のみマウス脳内への接種し、中和試験や蛍光抗体法によってウイルスの同定を行う。
6.抗体検査
中和試験により血清学的診断を行う。
7.予防・治療
不活化ワクチンによる予防を行う。流行が始まる前に免疫が付与されるよう、ワクチン接種を完了させておく。治療は対症療法のみ。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)