牛伝染性鼻気管炎(infectious bovine rhinotracheitis)
対象家畜:牛、水牛
1.原因
ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae)、バリセロウイルス属(Varicellovirus)の牛ヘルペスウイルス 1(Bovine herpes virus 1: BoHV-1)。別名牛伝染性鼻気管炎ウイルス(IBRV)とも呼ばれる。直鎖状の2本鎖DNAウイルス。
2.疫学
感染牛の鼻汁、流涙、生殖器分泌物を吸入することで経気道感染する。急性感染から回復後もウイルスは神経節に潜伏感染し、輸送や分娩などのストレスで再活性化して排泄され他の牛へ感染する。
3.臨床症状
鼻気管炎:高熱、元気消失、食欲不振、多量の流涙、流涎、粘液膿様鼻汁。角膜炎:眼瞼の浮腫、眼結膜の高度の充血。多くの場合は上部気道炎との合併症としてみられる。
4.病理学的変化
カタル性線維素性上部気道炎、非化膿性脳炎、三叉神経節炎。感染細胞では核内封入体がみられる。
5.病原学的検査
鼻汁、結膜、口腔スワブの直接塗末標本を作製し、蛍光染色を行う。鼻汁や結膜のスワブ、臓器材料を牛腎、牛精巣細胞に接種してウイルス分離検査を実施する。PCR法によるゲノム検出も可能。
6.抗体検査
ペア血清を用いた中和試験。
7.予防・治療
予防はワクチン接種。有効な治療法はない。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)