鶏白血病(avian leukosis)
1.原因
トリ白血病ウイルス(ALV)は、レトロウイルス科(Retroviridae)、オルソレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae)、アルファレトロウイルス属(Alpharetrovirus)に属する。ゲノムは+1本鎖のRNA、サイズは7.3 kb。癌遺伝子を持つ急性ウイルスと、持たない慢性ウイルスに分類される。また、腫瘍原生があるA、B、J亜群ウイルスと、腫瘍原性がない内在性のE亜群ウイルスに分類される。cDNAが細胞染色体上にプロウイルスとして挿入され、持続感染し、様々な腫瘍を誘発する。
2.疫学
感染母鶏の一部が垂直伝播を起こす。垂直感染した雛は、免疫寛容になっており、終生ウイルスを排泄し続ける。垂直感染した雛と同居飼育された雛は孵化後まもなく水平感染し、抗体保有鶏になる。発症時期は産卵期が多く、発症率は前者で高く、後者ではまれである。
3.臨床症状
食欲減退、下痢、衰弱がみられる。最も多くみられるリンパ性白血病(LL)では、産卵が突然止まり、下痢が2週間ほどで続き、鶏冠は血色を失い、急速にやせ、死亡する。腹部体表から腫大した肝臓を触れることができる。採卵鶏では顔面に粘液腫の形成も散見される。J亜群ウイルスの感染は肉用鶏に多く、雛では腫瘍ではなく発育不良が顕著である。種鶏では骨髄球腫症となる。
4.病理学的変化
LLでは、腫瘍は肝、脾、ファブリキウス嚢に多く、腎、肺、心、卵巣などにも有り、結節性、粟粒状、び漫性あるいは混合型を示す。J亜群ウイルスの感染で骨髄球腫症となった肉用種鶏では内臓腫瘍と、肋骨などの骨周囲に白色腫瘍塊が付着してみられる。LLでは腫瘍化したBリンパ細胞が濾胞性に分布する。
5.病原学的検査
感染しても発症はまれで、ウイルス検査は確定診断にはならないが、汚染状態を把握することは可能である。肉眼病変、組織病変から診断する。類症鑑別が必要なマレック病、細網内皮症とは、病理組織検査で鑑別する。
6.抗体検査
感染しても発症はまれなので、抗体検査は確定診断にはならないが、汚染状況を把握することは可能。
7.予防・治療
清浄化対策が行われている鶏種、感染率が低い鶏種、発生率の低い鶏種を導入する。治療法はない。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)